スポーツと違うから、みんなが一体になる必要なんてない。どれだけ違うか、どれだけ感性とか価値観とこが違うかを分かっていた方がいい。バラバラなままで、少しずつ分かり合うのが演劇
「責任なんて、とってもらわなくていいです」
「私たちの人生なんで」
「もちろん世の中には、何度演技しても新鮮さを保てる人がいます。そういう人を世間では天才と呼びます。でも、みんなは天才じゃないからね」
「みんなは天才じゃないからね。あ、もし天才だったら、ゴメンね」
文化祭一日目。十一時の開演に併せて、全員五時半の起床(という約束)。きちんと朝食をとってくること(という約束)。
照明の袴田君の妹は中学三年生で、お兄ちゃんに似ずに、信じられないほど可愛かった。そのハーフかと思うような袴田君の妹が、ラストシーンで号泣したらしい。
私たちは、舞台の上でなら、どこまででも行ける。どこまででも行ける切符をもっている。私たちの頭の中は、銀河と同じ大きさだ。
でも、私たちは、それでもやっぱり、宇宙の端にはたどり着けない。
私たちは、どこまでも、どこまでも行けるけど、宇宙の端にはたどり着けない。
どこまでも行けるから、だから私たちは不安なんだ。その不安だけが現実だ。誰か、他人が作ったちっぽけな「現実」なんて、私たちの現実じゃない。
私たちの創った、この舞台こそが、高校生の現実だ。
「舞台、撤収」
十八歳の私たちの前には、無限の星空が広がっている。
私たちを乗せた銀河鉄道は、まだ走りだしたばかりだ。
この高橋さおりという、強い信念と指導力に満ち溢れていないあえて言わせてもらえばあまりリーダーらしからぬのほほんとした性格の、しかし周囲を深く広く受け入れる包容力のはずば抜けた才能を発揮するヒロインが、この物語の後味をなんともいえぬ清々しさで包んでいる。
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