2019年8月18日日曜日

夏の日の本谷有希子『本当の旅』

千穐楽公演。

SNS中毒も一種の病気?

だんだん正常な判断を失う。

舞台でしかできない仕掛けがさすが。
深みに嵌って戻ってこられなくなる恐怖。
寒気がするように進んでいくときの本谷さんの
脚本と演出はすばらしい。

すごくいい芝居だったので広めようにも落ち日。。。
もうちょっと広い劇場を準備してあげたい。

楽屋もないところで演者さんもがんばってくれてました。

バーガーがあると知っていれば昼ご飯を食べずに行けたのに、も、残念でした。

2019年8月14日水曜日

『上級国民/下級国民(小学館新書)』(橘玲 著)より


「ここまでの話をまとめると、バブル前夜からバブル崩壊までの25年間で、通説とは異なって「全体としては」年功序列・終身雇用の日本型雇用慣行は温存され、若い女性ではたしかに非正規が大きく増えたものの、その多くは元専業主婦でした。その一方で、若い男性で急激な「雇用破壊」が起きたことは間違いありません。  だとしたら、結論はひとつしかありません。平成の日本の労働市場では、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊することで中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのです。」(

「日本では、報酬の高い産業(製造業)から低い産業(サービス業)へと一貫して労働力が移動したため、これによって市場経済の実質付加価値を6%減少させたと深尾さんは試算しています。」

「そのうえ日本的雇用システムでは、欧米とちがって労働組合が産業別に組織されておらず会社別になっています。「働き方」は経営者と労働組合の「自治」で決めることになっており、このような仕組みから、自分たちの既得権を犠牲にして雇用を増やそうなどという発想が出てくるわけはありません。」

「マスコミも含め日本の企業や官庁、労働組合などを支配しているのは「日本人、男性、中高年、有名大学卒、正社員」という属性を持つ〝おっさん〟で、彼らが日本社会の正規メンバーです。そんな〝おっさん〟の生活(正社員共同体としての会社)を守るためには「外国人、女性、若者、非大卒、非正規」のようなマイノリティ(下級国民)の権利などどうなってもいいのです。」

「この数年でこうした事態が同時多発的に起きているのは偶然ではありません。「働き方改革」は、団塊の世代が現役を引退したことではじめて可能になったのです。」

「あまりにも有名な一節ですが、福沢諭吉は『学問のすすめ』でこう書きました。
  人は生まれながらにして貴賤・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。  

これは一般には、「学問に勤めれば成功できる」という意味だと解釈されています。だが逆に言えば、「『貧人』『下人』なのは学ばなかった者の自己責任」ということになるでしょう。  教育の本質は「上級/下級」に社会を分断する「格差拡大装置」であることを、福沢諭吉は正しく理解していたのです。」


「本書は2019年4月13日(土)に東京大学・伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホールで行なわれた日本生物地理学会の市民シンポジウムの講演「リベラル化する社会の分断」をもとに加筆修正し、新書のかたちにまとめたものです。」